さて、そんな状況ですが、投稿していた論文がOpt. Lett. に採択・掲載されました!
Katsuhiro Mikami, Masahiko Ishino, Thanh-Hung Dinh, Shinji Motokoshi,
Noboru Hasegawa, Akira Kon, Yuichi Inubushi, Shigeki Owada,
Hiroo Kinoshita, and Masaharu Nishikino,
"Laser-induced damage thresholds and mechanism of silica glass induced by
ultra-short soft x-ray laser pulse irradiation," Opt. Lett. 45, 2435-2438 (2020)
Open accessではありませんが…。
酸化ケイ素 (SiO2) の軟X線領域におけるレーザー損傷しきい値のパルス幅依存性です。
レーザー損傷の研究で学位を取得していたので、ホームグラウンドと思ったのですが、
軟X線は未知の波長領域だったので、共著者の皆様に助けられてばかりでした。
この研究成果は、私の前所属の量子科学技術研究開発機構 他との共同成果です。
この場も借りて、関係各位に感謝申し上げます。
今となっては、、、私がX線レーザーや自由電子レーザーのような大型装置で、
筆頭著者として論文を執筆するなんて、、、という心境です。
執筆中は我武者羅だったので、そんな感情なんて全く有りませんでしたが (笑)
今年度、論文はこれだけで終わるわけには行きません。
学生さんにも伝えている言葉。「欲張れるだけ、欲張ろう!」
学生さんへ (解説)
窓ガラスって透明ですよね? だから外の景色が見えます。
黒い折り紙って、光を通しませんよね? だから黒いんです。
さて、ここで思考実験をしてみましょう。
虫眼鏡を持ってきました。太陽の光を窓ガラスと黒い折り紙に当てました。
どうなるでしょうか?
窓ガラスは、何ともないでしょう。
一方、黒い折り紙は、煙を上げて焼けてしまうでしょう。
この違いは何でしょう?
光 (のエネルギー) を吸収するか、吸収しないかの違いです。
さて、もう一歩踏み込んだ思考実験です。
ハイパワーのレーザー装置の光をレンズで絞って当てましょう。どうなるでしょうか?
黒い折り紙は、同じように光のエネルギーを吸収して焼けるでしょう。
そして、窓ガラスは…溶けます。削れます。亀裂が入ります。
太陽の光が、レーザーの光に変わっただけです。なんでこんな事が起こるのでしょうか?
こういったレーザー光で生じる材料の破壊現象は、
レーザー損傷 (Laser-induced damage) と呼ばれ、研究テーマになります。
この現象がわかると、レーザー損傷が生じない材料はどうすれば良いか?
レーザー損傷を生じやすくして加工が簡単にする方法はどうすれば良いか?といった
実学に貢献することができます。
さて、医用工学科の皆さん、相変わらず医療とは関係なさそうですよね? (笑)
国家試験の問題でも、教科書でも、標準テキストでも良いです、
レーザーという単語を思いの外多く見つけることができると思います。
そして、色々な種類のレーザーがあって、適切なレーザーを選ぶ問題もあると思います。
なぜ、適切なレーザーがあるのでしょうか?
本当にそれはBestなレーザーでしょうか?
Betterなだけではないでしょうか?
レーザーを知らないと、生体を知らないと、
その答えは自分では見つけられないのではないでしょうか?
解説の方が長い… (笑) ってか、最後は解説でもなんでもないし (苦笑)